電話の着信音の話
着信音といっても音楽とかベルの音というのではない。何度鳴ったら出るのだろうという話である。
私が子供の頃、電話とはものすごいものだった。ものすごいとは年に1度しか食べられないケーキとか、おじさんに連れられて10キロ離れた隣町に行くときの形容詞である。
小学校では電話は職員室にしかなかった。校長にかかってきたら先生が校長室に呼びに行って校長が受話器のところまできた。
子供が具合が悪いので休みますなんて電話が来るはずがない。だって当時電話がある家庭は大きなお店とか超えらい人に限られていた。
子供が具合悪かったら数百メートル離れた同じ学校に通っている子供の家に行ってお手紙を○○先生に渡してねとお小遣いを上げて頼んだ
おっと話がそれる。
当時は電話が来るということは何か重大なことが起きたということで、自分が客としてお店にいたときでも店の電話が鳴ると緊張したものだ。
高校を出て働き始めると1000人もいる工場だから内線(社内の電話)があるわけだ。といっても受話器は各課にひとつで工場全体で10数個くらいしかない。そして聞くと回線が3つだという。要するに6人の人が話をしていると、7人目の人が電話をしようとしても話中になる。
そんなわけで急ぎの用事があると私のような新人に手紙を持たせ工場内を走らせた。まさにメッセンジャーボーイである。
電話のコール音はワンサイクル3秒だそうで、3回までに出ろと厳しく言われた。それ以来、私はキーボードを叩いていても仕事で読んでいても、放り出して…