川中三四郎氏は日経エコロジー誌で「環境目的が3年先だったのを、これからは3年先を意図と理解すればよい」と語っている。
これだけ読めば「そうか!今まで目的と呼んでいたのが意図に変わったのか」と早とちりする人がいるかもしれず、「規格の意図とは3年先に達成すべき目標値なのだ」と三四郎氏が書いたとおりに理解する人もいるかもしれない。いや、三四郎氏は後者のように理解せよと語っているのは間違いない。
昨日に引き続き、本日はそのフレーズが正しいか否かを検討する。・・・オッ、なんだかおもしろそうだぞ!
まず、JISQ14001:2015では「意図」という語は名詞形として使われていない。「意図」という語は6か所で使われているが、すべて「意図した成果」(5か所)あるいは「意図しない変更」(1か所)というふうに形容詞句として用いられている。では「意図した成果」が「目的」と入れ替えることができるのだろうか?
いや、待ってくれ、我々は日本語で語ってもしょうがない。原語はどうなんだ!
勘違いはないと思うがJIS規格の「目的」はpurposeの訳ではなくobjectiveの訳である。objectiveとは一般語ではなく定義されていて、「result to be achieved」である。
他方「意図した成果」は「intended outcome」だから「result to beachieved」と等価なのであろうか? 「目的」が「成し遂げるべき結果」なら「意図した成果」とニヤリイコール、いやイコールかもしれない。おお、なんか我が愛しき三四郎氏の語ることが正しいように見えてきたぞ! 珍しいこともあるものだ。
しかしちょっと待ってほしい。(朝日新聞用語である)
「意図した成果」はただそれだけでは使われていない。使われている5か所ではどのようなコンテキストなのか。
・環境マネジメントシステムの意図した成果
・環境パフォーマンスの向上を含む意図した成果
・環境マネジメントシステムがその意図した成果を達成することを確実にする
・環境マネジメントシステムが、その意図した成果を達成できるという確信を与える
・環境マネジメントシステムの意図した成果を達成するため
目的(objective)は2015年版では「目標」と訳されており、規格では13か所で使われているが、すべて一般語の目標ではなく「environmental objectives」という熟語で使われいる。そう、あれですよ、計画をたてて云々という、以前は環境実施計画、その前はマネジメントプログラムというものを立てる環境目標であるわけです。
ところで「環境マネジメントシステムがその意図したもの」とは「環境実施計画」だけでなく、遵法とか規則に従った運用とか、定期的に内部監査をするとか、まあいろいろあるわけで、「環境マネジメントシステムが、その意図した成果」はそれらが順調(?)に達成されたか否かをフォローしていかねばなりません。
となると、これらの包含関係を考えると、
「意図したこと」⊃「環境目標」
正しく(英語では)は
「intended outcome」⊃「environmental objectives」
となります。
だから三四郎さんの「環境目的が3年先だったのを、これからは3年先を意図と理解すればよい」という新説(珍説)は間違いであろうとなります。
そしてなによりもであるが・・・・「意図した成果」であろうと「環境目標」であろうと、3年という期限は無縁である。そもそも環境マネジメント規格で具体的時間を指定したところは見当たらない。
本日は本家を更新しました。
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